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この講座の使い方

7日間で古文常識をひと通り仕上げるための地図

古文常識とは、単語や文法のように「訳すための道具」ではなく、作品の背景知識そのものを指します。GMARCHレベルの入試では、リード文や注釈で作品名・作者・成立時代が問われたり、本文の内容が「誰と誰の恋愛か」「どんな官職の話か」を知っているかどうかで読解のスピードが大きく変わったりします。つまり古文常識は、読解を助ける前提知識であると同時に、それ自体が得点源になる分野です。

7日間の構成は、配点比重の大きい文学史を前半3日にまとめ、後半3日で制度・生活常識を固め、最終日に全範囲を横断する総復習を置いています。1日30〜40分を目安に、講義パートを読んでから復習問題を解いてください。Day2以降は前日までの累積復習も付けているので、忘れかけた頃にもう一度触れる設計になっています。

Day 1
物語文学の系譜竹取物語から源氏物語、擬古物語まで。作り物語と歌物語の違い
Day 2
日記文学・三大随筆土佐日記から更級日記、枕草子・方丈記・徒然草の比較
Day 3
説話・軍記・歴史物語・和歌集今昔物語集、平家物語、四鏡の時代トラップ、八代集の順番
Day 4
官位・官職制度位階、摂政と関白、蔵人頭、国司と受領
Day 5
年中行事・季節感五節句、賀茂祭、除目、相撲節会など王朝のカレンダー
Day 6
恋愛・結婚・信仰通い婚、後朝の文、女房名、物忌み・方違え、出家
Day 7
総復習全範囲ミックスの実戦問題と弱点チェック
✎ 学習のコツ

作品名を単独で覚えるより、「誰が」「いつ頃」「何を」「どんな文体で」書いたかをワンセットの物語として覚えると定着します。各日の講義パートはそのために書いています。表は試験直前の見直し用、問題は理解の確認用として使ってください。

Day 1

物語文学の系譜

竹取物語から源氏物語、そしてその後の擬古物語まで

今日のゴール

  • 「作り物語」と「歌物語」の違いを説明できる
  • 源氏物語を中心に、その前後の物語文学の流れを時系列で言える
  • 竹取物語・伊勢物語・源氏物語の基本情報(作者・成立時期・内容の要点)を即答できる

物語文学は二つの流れから始まる

平安時代の物語文学は、大きく分けて二つの流れから生まれました。一つは、空想的な事件を筋立てて語る作り物語。もう一つは、和歌を中心に短いエピソードを積み重ねる歌物語です。この二つが後に源氏物語で融合し、王朝物語という頂点を作ります。まずはこの大枠を押さえてください。

竹取物語―物語の出で来はじめの祖

作者不詳 9世紀末〜10世紀初頭 作り物語

現存する日本最古の物語とされるのが竹取物語です。竹の中から生まれたかぐや姫が、五人の貴公子と帝からの求婚をすべて退け、最後は月へと帰っていく、という筋書きは知っている人も多いでしょう。源氏物語の中で「物語の出で来はじめの祖」と評されており、後のあらゆる物語のルーツとして位置づけられている点が入試でも問われます。

伊勢物語大和物語―歌物語という形式

伊勢物語=10世紀前半・作者不詳 歌物語

伊勢物語は「昔、男ありけり」という書き出しで知られる、和歌とその成立事情(詞書)を核にした短い章段の集まりです。主人公の「昔男」は、歌人・在原業平がモデルとされています。同じ歌物語の系統には、より説話的な色合いが強い大和物語や、平貞文がモデルとされる平中物語もあります。歌物語は一貫した長編の筋を持たず、和歌を軸にした小さな物語の集合体である、という点が作り物語との大きな違いです。

宇津保物語落窪物語―長編化していく作り物語

宇津保物語は現存する最古の長編物語とされ、俊蔭の一族に伝わる琴(きん)の秘曲をめぐる物語です。落窪物語は、継母にいじめられる娘が最終的に幸せをつかむという、いわゆる「継子いじめ物語」の代表格で、シンデレラ型の物語として紹介されることもあります。これらは源氏物語に先行して、作り物語を長編化・写実化していった作品として押さえておきましょう。

源氏物語―王朝物語の到達点

紫式部 11世紀初頭 全54帖

作り物語の空想性と歌物語の抒情性、さらに日記的な心理描写までを統合したのが源氏物語です。主人公・光源氏の栄華と苦悩を描く前半部、光源氏の晩年を描く部分、そして光源氏の死後、子孫たちの物語を宇治を舞台に描く「宇治十帖」まで、全54帖からなる大長編です。作者は中宮彰子に仕えた女房・紫式部。「もののあはれ」という美意識を体現する作品として、日本文学史上最も重要な位置を占めます。

源氏物語のあとに続く物語たち

源氏物語の完成度が高すぎたために、以降の物語文学は源氏物語を手本にする擬古物語という形で書き継がれていきます。狭衣物語や浜松中納言物語などがその代表です。また鎌倉時代には、男女が入れ替わって成長するとりかへばや物語のような変わり種も生まれました。物語文学そのものを論じた最初の評論書とされる無名草子(鎌倉初期)も、物語史を俯瞰する際によく引用される作品です。

物語文学 早見表
作品名分類成立要点
竹取物語作り物語9世紀末〜10世紀初現存最古の物語。「物語の出で来はじめの祖」
伊勢物語歌物語10世紀前半「昔、男ありけり」。在原業平がモデル
大和物語歌物語10世紀中頃伊勢物語より説話性が強い
平中物語歌物語10世紀前半平貞文がモデル
宇津保物語作り物語10世紀後半現存最古の長編物語。琴の秘曲が軸
落窪物語作り物語10世紀末継子いじめ物語の代表
源氏物語作り物語(王朝物語)11世紀初頭紫式部。全54帖。「もののあはれ」
狭衣物語・浜松中納言物語擬古物語11世紀後半源氏物語を手本にした後続作品
とりかへばや物語擬古物語平安末〜鎌倉初男女入れ替わりの物語
無名草子物語評論鎌倉初期現存最古の物語評論書
◆ 差がつく識別ポイント

作り物語 と 歌物語 の違い

作り物語虚構の筋立てを持つ長編寄りの物語。竹取物語・宇津保物語・源氏物語など。
歌物語和歌+詞書を核にした短編の集合。一貫した長い筋を持たない。伊勢物語・大和物語など。

源氏物語はこの両方の性質を統合した作品、という位置づけで理解しておくと、「なぜ源氏物語が特別なのか」を説明できるようになります。

復習問題 全10問

Q1「物語の出で来はじめの祖」と評される、現存最古の物語は何か。
A竹取物語。かぐや姫が月へ帰る結末で知られる、作者不詳の作り物語。
Q2「昔、男ありけり」で始まる歌物語の題名と、主人公のモデルとされる歌人を答えよ。
A伊勢物語。主人公「昔男」のモデルは在原業平とされる。
Q3源氏物語の作者は誰か。また、その作者が仕えた中宮は誰か。
A紫式部。一条天皇の中宮・彰子に仕えた。
Q4源氏物語は全何帖からなるか。また、光源氏の死後を描く最後の部分は何と呼ばれるか。
A全54帖。最後の部分は宇治を舞台にすることから「宇治十帖」と呼ばれる。
Q5継母にいじめられる娘が最終的に幸せになる、いわゆる継子いじめ物語の代表作は何か。
A落窪物語。
Q6現存する最古の長編物語とされ、琴の秘曲の伝授を軸とする作品は何か。
A宇津保物語。
Q7次のうち、歌物語に分類されるものをすべて選べ。
①竹取物語 ②伊勢物語 ③大和物語 ④源氏物語
A②と③。①と④は作り物語に分類される。
Q8源氏物語に代表される王朝物語の美意識を象徴する言葉を答えよ。
Aもののあはれ。
Q9男女が入れ替わって成長していく鎌倉時代の物語は何か。
Aとりかへばや物語。
Q10次の記述のうち正しいものを選べ。
①作り物語は和歌を核にした短編の集合体である ②歌物語は一貫した長編の筋を持つのが特徴である ③源氏物語は作り物語と歌物語双方の性質を統合した作品と位置づけられる
A③。①と②は作り物語と歌物語の説明が入れ替わっている。
Day 2

日記文学・三大随筆

土佐日記から更級日記へ、そして枕草子・方丈記・徒然草の比較

今日のゴール

  • 平安女流日記文学の代表作を成立順に説明できる
  • 三大随筆(枕草子・方丈記・徒然草)を作者・文体・思想で比較できる
  • 「日記文学」と「随筆」の違いを説明できる

日記文学のはじまり―男性が女性のふりをした理由

平安時代の「日記」は、事務的な記録ではなく、自分の心情を仮名文でつづる文学ジャンルでした。その最初の一歩を踏み出したのが、歌人・紀貫之による土佐日記(935年頃)です。当時、公的な漢文日記は男性が書くものとされていたため、貫之は「男もすなる日記といふものを、女もしてみむとてするなり」という一文で、女性に仮託して仮名文で書くという体裁をとりました。土佐から京へ帰る旅の記録という体裁の中に、亡くなった娘への哀惜などの感情が織り込まれています。

女性による自照的な日記へ

土佐日記のあと、実際に女性の手による日記文学が次々と生まれます。蜻蛉日記(藤原道綱母、10世紀後半)は、夫・藤原兼家との不安定な結婚生活の苦悩を赤裸々に描いた、女性による最初の本格的な自照文学とされます。和泉式部日記は、和泉式部と敦道親王との恋愛を、和歌のやり取りを軸に物語風に描いた作品です。紫式部日記は、中宮彰子の出産などの宮廷生活の記録に加え、清少納言への辛辣な人物評があることでも知られています。

回想録としての日記―更級日記

更級日記(菅原孝標女、1060年頃)は、物語(とりわけ源氏物語)に憧れる少女時代から、宮仕え、結婚、夫との死別を経て、晩年に至るまでを回想する自伝的な日記です。少女時代の「源氏物語をひたすら読みたい」という願望が印象的に描かれ、当時の物語文学の受容のされ方を知る資料としても重要です。鎌倉時代には、所領をめぐる訴訟のために京から鎌倉へ下る道中を描いた十六夜日記(阿仏尼)のような紀行的日記も生まれます。

三大随筆―同じ「随筆」でもこれだけ違う

随筆は日記と異なり、日々の出来事の記録という枠にとらわれず、思いついたことを自由に書き連ねるジャンルです。特に重要な三作品を「三大随筆」と呼びます。

枕草子(清少納言、11世紀初頭)は、中宮定子に仕えた体験をもとに、鋭い観察眼で宮廷生活の美や滑稽を描きます。「春はあけぼの」のような自然観察の章段、宮中でのエピソードを記す日記的章段、「にくきもの」のような分類列挙の章段など多彩な章段からなり、貫かれているのは「をかし」という明るく知的な美意識です。

方丈記(鴨長明、1212年)は、安元の大火・治承の辻風・福原遷都・養和の飢饉・元暦の大地震という五つの災厄の記録から始まり、後半では出家後に方丈(一丈四方)の庵にこもった閑居生活を描きます。仏教的な無常観が全編を貫いています。

徒然草(兼好法師〈吉田兼好〉、14世紀前半)は、「つれづれなるままに、日暮らし、硯にむかひて」という書き出しで知られ、無常観を基調にしつつも、処世訓・美意識・滑稽譚など話題は非常に多岐にわたります。三大随筆の中では最も話題が雑多で実用的な色合いが強い点が特徴です。

日記文学 早見表
作品名作者成立目安内容の要点
土佐日記紀貫之935年頃男性が女性に仮託した最初の仮名日記。土佐から京への帰路
蜻蛉日記藤原道綱母10世紀後半女性による最初の自照的日記。夫との結婚生活の苦悩
和泉式部日記和泉式部11世紀初敦道親王との恋愛を歌のやり取りで描く
紫式部日記紫式部11世紀初中宮彰子の宮廷生活の記録。清少納言批判で有名
更級日記菅原孝標女1060年頃物語への憧れから晩年までの回想録
十六夜日記阿仏尼鎌倉時代所領相続の訴訟のため京から鎌倉へ下る紀行的日記
◆ 差がつく識別ポイント

三大随筆 比較

枕草子清少納言/平安中期/「をかし」/宮廷生活の明るい観察
方丈記鴨長明/鎌倉初期/無常観/五大災厄と閑居生活
徒然草兼好法師/鎌倉末期〜南北朝/無常観+処世訓/話題が最も多岐
日記との違い随筆は出来事の記録に縛られず、思索・観察・批評を自由に書き連ねる点が日記と異なる

成立順は「枕草子(平安)→方丈記(鎌倉初期)→徒然草(鎌倉末期)」。清少納言と紫式部は同時代のライバル的存在として対比されやすいことも押さえておきましょう。

復習問題 全10問

Q1「男もすなる日記といふものを、女もしてみむとて」という書き出しを持つ作品と、その作者を答えよ。
A土佐日記。紀貫之。
Q2藤原兼家との結婚生活の苦悩を描いた、女性による最初の自照的日記文学は何か。
A蜻蛉日記(作者は藤原道綱母)。
Q3菅原孝標女が、少女時代から晩年までを回想して書いた日記は何か。
A更級日記。
Q4枕草子の作者と、その作品を貫く美意識を表す言葉を答えよ。
A清少納言。「をかし」。
Q5方丈記の冒頭で語られる五つの災厄のうち、二つ挙げよ。
A安元の大火・治承の辻風・福原遷都・養和の飢饉・元暦の大地震のうち二つ。
Q6「つれづれなるままに、日暮らし、硯にむかひて」で始まる作品の作者は誰か。
A兼好法師(吉田兼好)。
Q7三大随筆を成立の古い順に並べよ。
A枕草子→方丈記→徒然草。
Q8敦道親王との恋愛を、和歌のやり取りを中心に描いた日記文学は何か。
A和泉式部日記。
Q9次のうち、随筆と日記の違いの説明として正しいものを選べ。
①随筆は必ず出家後に書かれる ②随筆は出来事の記録という枠に縛られず自由に書かれる ③日記は必ず女性が書くものである
A②。①③はいずれも誤り。
Q10所領相続の訴訟のため京から鎌倉へ下る道中を描いた、阿仏尼による作品は何か。
A十六夜日記。

累積復習 Day1より3問

前日の内容を忘れていないか確認しましょう。

C1竹取物語はどのようなジャンルの物語で、何と評されているか。
A作り物語。「物語の出で来はじめの祖」と評される。
C2伊勢物語の主人公「昔男」のモデルとされる歌人は誰か。
A在原業平。
C3源氏物語の作者と、作品を貫く美意識の言葉を答えよ。
A紫式部。「もののあはれ」。
Day 3

説話・軍記・歴史物語・和歌集

今昔物語集から平家物語、四鏡の時代トラップ、八代集の順番まで

今日のゴール

  • 代表的な説話集・軍記物語の内容と特徴を説明できる
  • 四鏡について、成立順と扱う時代の順番の違いを説明できる(最頻出の引っかけ)
  • 八代集を成立順に言える

説話集―「今は昔」から始まる小さな物語の集合

今昔物語集(平安末期、編者不詳)は、「今は昔」という書き出しで統一された千余りの説話を、天竺(インド)・震旦(中国)・本朝(日本)の三部に分けて収める、日本最大級の説話集です。宇治拾遺物語(鎌倉初期)は今昔物語集と共通する話も多いものの、より庶民的で滑稽な話も収め、後の昔話の原型(こぶとり爺さんなど)を含むことでも知られます。ほかに、仏教的な発心・往生の話を集めた鴨長明の発心集、教訓性の強い十訓抄、幅広い分野を扱う古今著聞集なども覚えておきましょう。

軍記物語―戦乱を語り継ぐ文学

軍記物語は武士の戦いを主題にした物語です。将門記(平将門の乱を描く、現存最古の軍記物語で漢文体)を先駆けとし、保元の乱を描く保元物語、平治の乱を描く平治物語と続きます。最も重要なのは平家物語(13世紀前半頃)で、「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり」という冒頭句とともに、平氏一門の栄華と滅亡を、和漢混淆文で語ります。琵琶法師によって「平曲」として語り伝えられた点も特徴です。室町時代に成立した太平記は、南北朝の動乱を描いています。

歴史物語―栄花物語から四鏡へ

歴史を物語風の仮名文で描くジャンルを歴史物語と呼びます。最初の歴史物語とされるのが栄花物語(藤原道長の栄華を編年体で描く)です。そして「〜鏡」と名のつく四作品、大鏡・今鏡・水鏡・増鏡をまとめて四鏡と呼びます。ここが今日いちばんの山場です。

四鏡の最重要トラップ―「成立順」と「扱う時代順」は違う

四鏡は、成立した順番と、作中で扱っている時代の順番が一致しません。これは入試で非常によく狙われるポイントです。

成立が古い順は「大鏡→今鏡→水鏡→増鏡」で、覚え方としてよく「おおいまみずまし(大今水増)」という語呂が使われます。大鏡(平安後期・院政期、藤原道長の栄華を批判的視点も交えて描く)が最初に成立し、今鏡(平安末期、大鏡の後を継ぐ)、水鏡(鎌倉初期)、増鏡(南北朝期)と続きます。

ところが、作中で扱っている時代の古い順に並べ替えると「水鏡→大鏡→今鏡→増鏡」に変わります。水鏡は神武天皇から仁明天皇までといちばん古い時代を扱っているのに、成立は大鏡より後です。大鏡は文徳天皇から後一条天皇まで、今鏡はその続きの後一条天皇から高倉天皇まで、増鏡は後鳥羽天皇から後醍醐天皇までを扱います。「成立順」と「時代順」のどちらを問われているかを本文でよく確認する癖をつけてください。

勅撰和歌集―八代集

天皇や上皇の命令(勅命)で編纂された和歌集を勅撰和歌集と呼びます。最初の八つをまとめて八代集と呼び、成立順に「古今和歌集→後撰和歌集→拾遺和歌集→後拾遺和歌集→金葉和歌集→詞花和歌集→千載和歌集→新古今和歌集」と続きます。特に重要なのは最初と最後です。古今和歌集(905年、醍醐天皇の勅命、紀貫之らが撰者、仮名で書かれた序文=仮名序を持つ)は最初の勅撰和歌集。新古今和歌集(1205年、後鳥羽院の勅命、藤原定家らが撰者)は八代集の最後を飾り、技巧的で幻想的な歌風で知られます。

四鏡 対照表(成立順 と 時代順の違い)
成立順作品名成立時期扱う時代の範囲時代順での位置
1大鏡平安後期文徳天皇〜後一条天皇2番目
2今鏡平安末期後一条天皇〜高倉天皇3番目
3水鏡鎌倉初期神武天皇〜仁明天皇1番目(最古)
4増鏡南北朝期後鳥羽天皇〜後醍醐天皇4番目
八代集 成立順一覧
和歌集勅命した天皇・院備考
1古今和歌集醍醐天皇最初の勅撰集。紀貫之らが撰者。仮名序を持つ
2後撰和歌集村上天皇
3拾遺和歌集花山院
4後拾遺和歌集白河天皇撰者は藤原通俊
5金葉和歌集白河院撰者は源俊頼
6詞花和歌集崇徳院撰者は藤原顕輔
7千載和歌集後白河院撰者は藤原俊成
8新古今和歌集後鳥羽院撰者は藤原定家ら。八代集最後。技巧的・幻想的歌風
◆ 差がつく識別ポイント

四鏡の覚え方

成立順は語呂で「おおいまみずまし(大→今→水→増)」。ただし本文で問われるのが「成立順」なのか「扱う時代順(水→大→今→増)」なのかを必ず見極めること。水鏡だけが成立の割に古い時代を扱っている、という一点だけ覚えておけば残り三作は成立順=時代順で並ぶので迷いません。

説話集 と 歴史物語 の違い

説話集独立した短い話を数多く集めたもの。教訓性・仏教色を持つことが多い。今昔物語集など。
歴史物語史実を時代順に、物語風の文体で描いたもの。大鏡・栄花物語など。

復習問題 全10問

Q1「今は昔」という書き出しで統一され、天竺・震旦・本朝の三部からなる説話集は何か。
A今昔物語集。
Q2「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり」で始まり、和漢混淆文で書かれた軍記物語は何か。
A平家物語。
Q3平家物語を琵琶の伴奏で語り伝えた人々を何と呼ぶか。
A琵琶法師(語りの形式は「平曲」)。
Q4四鏡を成立の古い順に答えよ。
A大鏡→今鏡→水鏡→増鏡。
Q5四鏡のうち、扱っている時代がもっとも古いのはどれか。
A水鏡(神武天皇〜仁明天皇を扱う)。成立は3番目だが時代は最古という点が頻出のひっかけ。
Q6藤原道長の栄華を編年体で描いた、最初の歴史物語とされる作品は何か。
A栄花物語。
Q7最初の勅撰和歌集の名称と、その撰者の一人を答えよ。
A古今和歌集。撰者の一人は紀貫之。
Q8八代集の最後を飾り、後鳥羽院の勅命により藤原定家らが撰んだ和歌集は何か。
A新古今和歌集。
Q9南北朝の動乱を描いた、室町時代成立の軍記物語は何か。
A太平記。
Q10次のうち、説話集に分類されないものを選べ。
①今昔物語集 ②宇治拾遺物語 ③大鏡 ④古今著聞集
A③。大鏡は歴史物語に分類される。

累積復習 Day1・Day2より4問

忘れていないか、もう一度確認しましょう。

C1歌物語に分類される作品を一つ挙げよ。
A伊勢物語、大和物語、平中物語のいずれか。
C2源氏物語の宇治十帖とはどの部分を指すか。
A光源氏の死後、宇治を舞台に子孫たちを描く最後の部分。
C3清少納言が仕えた中宮は誰か。
A一条天皇の中宮・定子。
C4三大随筆のうち、鎌倉最末期に成立し話題が最も多岐にわたるものはどれか。
A徒然草。
Day 4

官位・官職制度

位階のしくみ、摂政と関白、蔵人頭、国司と受領

今日のゴール

  • 位階と官職の関係、公卿と呼ばれる範囲を説明できる
  • 摂政と関白の違いを説明できる
  • 受領・遥任など地方官のしくみを説明できる

位階と官職―貴族の序列

平安貴族の世界には、個人の身分を示す「位階」(一位から八位、その下に初位)と、実際の仕事を示す「官職」の二つの序列がありました。原則として位階に見合った官職に就く(これを官位相当制と呼びます)ため、位階が高いほど重要な官職に就けます。特に三位以上(および参議)は「公卿(くぎょう)」と呼ばれ、朝廷の最高幹部として扱われました。古文の本文で身分の高さを判断する手がかりになります。

太政官のトップたち

朝廷の政務を統括する最高機関を太政官と呼び、そのトップに太政大臣(常には置かれない最高位の名誉職的な位置づけ)、その下に左大臣右大臣(左大臣の方が格上)、さらに大納言中納言参議が続きます。これらの高官が合議で政治を動かす様子は、源氏物語をはじめ多くの作品の背景になっています。

摂政 と 関白 ―似ているようで役割が違う

藤原氏が権力を握った摂関政治の中心にあるのが摂政と関白です。摂政は天皇が幼少・女性である場合に、天皇に代わって政務そのものを行う役職です。一方関白は、天皇が成人した後に、天皇の政務を補佐する(天皇に奏上する文書を事前に見る、という形で実質的に決定権を握る)役職です。つまり「天皇の代わりに行うのが摂政」「天皇を補佐するのが関白」という違いを押さえてください。藤原道長・藤原頼通の親子が摂関政治の全盛期を築いたことも合わせて覚えておきましょう。

蔵人頭と令外官

律令に規定のない役職を「令外官(りょうげのかん)」と呼びます。天皇の秘書的な役割を担う蔵人頭(蔵人所のトップ、蔵人はその部下)や、京中の治安維持にあたる検非違使はいずれも令外官です。蔵人頭は天皇と直接やり取りする花形の役職で、出世コースの一つでもありました。

国司と受領―地方に赴く貴族たち

地方の行政を担う官職を国司と呼びますが、実際には現地に赴任せず、代理人を送って収入だけを得る「遥任」も一般的でした。実際に現地に赴任して行政の実権を握る筆頭者のことを特に受領と呼びます。受領は徴税権を握るため経済的にはうまみが大きく、財を成す者も多かった一方、都の貴族社会からは一段低く見られる傾向もありました。更級日記の作者の父・菅原孝標が上総介として地方に赴任した経験なども、こうした国司の実態を知る手がかりになります。

太政官の主要官職
官職位置づけ
太政大臣最高位。常設ではない名誉職的な性格
左大臣太政官の実質的トップ。右大臣より格上
右大臣左大臣に次ぐ地位
大納言左右大臣に次ぐ重臣
中納言大納言に次ぐ地位
参議公卿の末席。三位に満たなくても公卿として扱われることがある
◆ 差がつく識別ポイント

摂政 と 関白

摂政天皇が幼少・女性のとき、政務を「代行」する
関白天皇が成人した後、政務を「補佐」する

国司 と 受領

国司地方官の総称。現地に赴任しない「遥任」も多い
受領実際に現地に赴任し、行政の実権を握る国司の筆頭者

復習問題 全8問

Q1三位以上の貴族(および参議)を総称して何と呼ぶか。
A公卿。
Q2太政官において左大臣と右大臣ではどちらが格上か。
A左大臣。
Q3天皇が幼少のときに政務を代行する役職を何というか。
A摂政。
Q4天皇が成人した後、政務を補佐する役職を何というか。
A関白。
Q5律令に規定のない後発の役職を総称して何と呼ぶか。蔵人頭や検非違使が該当する。
A令外官。
Q6天皇の秘書的役割を担い、出世コースの一つともされた令外官は何か。
A蔵人頭。
Q7地方に実際に赴任せず、代理人を送って収入だけを得る国司のあり方を何というか。
A遥任。
Q8実際に現地に赴任し、行政の実権を握る国司の筆頭者を何と呼ぶか。
A受領。

累積復習 Day1〜3より4問

C1四鏡のうち成立が最も早いものはどれか。
A大鏡。
C2八代集の最初と最後の和歌集をそれぞれ答えよ。
A最初は古今和歌集、最後は新古今和歌集。
C3方丈記の作者と、そこに貫かれる思想を答えよ。
A鴨長明。無常観。
C4宇津保物語はどのような点で「最古」とされるか。
A現存する最古の長編物語とされる。
Day 5

年中行事・季節感

王朝の一年を彩る行事のカレンダー

今日のゴール

  • 五節句とその内容を月順に言える
  • 賀茂祭・除目・相撲節会など主要行事の内容を説明できる
  • 行事が古文本文中でどんな場面で使われるかイメージできる

年中行事はなぜ古文常識として重要か

王朝貴族の生活は、季節ごとに定められた行事を軸に回っていました。古文の本文で「五月五日」「七夕」といった時期の記述が出てきたとき、それがどんな行事の場面かを知っていると、状況を素早くイメージできます。年中行事は単なる暗記事項ではなく、読解のスピードを上げるための地図だと考えてください。

正月から春―一年の始まり

正月には天皇が元日の儀式に臨み、七日には白馬(あおうま)を見て一年の邪気を払う白馬節会(あおうまのせちえ)が行われます。また、官職を任命する除目(じもく)は春(県召除目・地方官の任命)と秋(司召除目・中央官の任命)の二回行われる重要な人事行事で、除目の結果に一喜一憂する貴族の姿は多くの作品に描かれます。三月には曲水の宴(流れる水に杯を浮かべて和歌を詠む遊び)が行われます。

夏の行事―賀茂祭と端午

四月には京都・賀茂神社の祭礼である賀茂祭(現在の葵祭)が行われ、王朝文学に頻繁に登場する最重要行事の一つです。源氏物語「葵」の巻での車争いの場面はこの祭礼が舞台になっています。同じ四月には夏服に替える更衣(ころもがえ)も行われます。五月五日は端午の節句で、菖蒲を軒に挿すなどして邪気を払いました。

秋の行事―七夕と相撲

七月七日は七夕(乞巧奠〈きっこうでん〉、裁縫や芸事の上達を願う行事)、八月には力士たちが天皇の御前で相撲を取る相撲節会が行われます。九月九日は菊の花にちなむ重陽の節句で、菊の着せ綿など長寿を願う風習がありました。

冬の行事―新嘗祭と追儺

十一月には、その年の新穀を天皇が神々に供え自らも食する新嘗祭と、それに伴う五節の舞(若い女性が舞う華やかな行事)が行われます。大晦日には、鬼を追い払う追儺(ついな)、いわゆる「鬼やらい」の行事で一年を締めくくります。

五節句のまとめ

年間を通じて特に重要な五つの節句を五節句と呼びます。人日(正月七日)・上巳(三月三日)・端午(五月五日)・七夕(七月七日)・重陽(九月九日)の五つで、いずれも奇数(陽数)が重なる日に邪気を払う行事が行われる、という共通点があります。

王朝の年中行事カレンダー
時期行事内容
正月七日白馬節会白馬を見て一年の邪気を払う
正月・七月除目官職の任命。春は地方官、秋は中央官
三月三日上巳(曲水の宴)杯を流水に浮かべ和歌を詠む
四月賀茂祭賀茂神社の祭礼。現在の葵祭
四月・十月更衣季節に合わせて衣服を替える
五月五日端午の節句菖蒲で邪気を払う
七月七日七夕(乞巧奠)裁縫・芸事の上達を願う
八月相撲節会天皇御前での相撲
九月九日重陽の節句菊にちなみ長寿を願う
十一月新嘗祭・五節の舞新穀を神に供える。若い女性による舞
十二月大晦日追儺鬼を追い払う「鬼やらい」
◆ 差がつく識別ポイント

賀茂祭が出てきたら

本文中に「祭」とだけ書かれている場合、平安文学では特に断りがなければ賀茂祭を指すことが多い、という慣習も知っておくと読解がスムーズになります。源氏物語「葵」の巻の車争いのように、祭見物の場面は人間関係のドラマの舞台としてよく使われます。

五節句 語呂

人日(1/7)・上巳(3/3)・端午(5/5)・七夕(7/7)・重陽(9/9)。上巳と端午と七夕と重陽は「月と日が同じ奇数」という規則性で覚えると忘れにくくなります。

復習問題 全8問

Q1官職を任命する行事を何というか。また、それは年に何回、いつ行われるか。
A除目。春(地方官)と秋(中央官)の年2回。
Q2四月に行われる、賀茂神社の祭礼を何というか。
A賀茂祭(現在の葵祭)。
Q3五節句のうち、五月五日にあたるものは何か。
A端午の節句。
Q4七月七日に行われる、裁縫や芸事の上達を願う行事の別名を答えよ。
A乞巧奠。
Q5大晦日に鬼を追い払う行事を何というか。
A追儺(鬼やらい)。
Q6十一月に行われる、新穀を神に供える行事と、それに伴う若い女性の舞をそれぞれ答えよ。
A新嘗祭。五節の舞。
Q7九月九日の重陽の節句にちなむ植物は何か。
A菊。
Q8季節に応じて衣服を替える習慣を何というか。
A更衣。

累積復習 Day1〜4より4問

C1摂政と関白の違いを一言で説明せよ。
A摂政は天皇の政務を代行、関白は成人天皇の政務を補佐する。
C2「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり」の作品名を答えよ。
A平家物語。
C3四鏡のうち、扱う時代が最も古いのはどれか。
A水鏡。
C4「もののあはれ」を体現する作品とその作者は誰か。
A源氏物語。紫式部。
Day 6

恋愛・結婚・家族制度と生活信仰

通い婚から女房名の付け方、物忌み・方違え・出家まで

今日のゴール

  • 通い婚のしくみと、後朝の文の役割を説明できる
  • 女房名がどのように付けられるかを説明できる
  • 物忌み・方違えなど陰陽道に基づく生活習俗を説明できる

通い婚―王朝の結婚のかたち

平安貴族の結婚は、現代のように一つの家に同居する形ではなく、男性が女性の家に夜通う通い婚(妻問婚)が一般的でした。男性が三夜続けて女性のもとに通うと結婚が成立したとされ、三日目の夜に「三日夜の餅(みかよのもち)」という餅を二人で食べる儀式が行われました。物語で男性が女性の家に忍んで通う場面が頻出するのは、この結婚形態が背景にあります。

後朝の文と垣間見

男女が一夜を共にした翌朝、男性が女性のもとへ送る和歌の手紙を後朝の文(きぬぎぬのふみ)と呼びます。早く届けるほど誠実な愛情の表れとされ、届くのが遅いと女性側は不安に思う、という心理描写がよく描かれます。また、男性が御簾やすだれの隙間から女性を覗き見て恋に落ちる、という物語の定型を垣間見(かいまみ)と呼びます。源氏物語で光源氏が若紫を垣間見て引き取る場面などが代表例です。

女房名はどう付けられるか

宮中や貴族の家に仕えた女性(女房)は、実名ではなく、父や夫、兄弟の官職名にちなんだ通称で呼ばれるのが通例でした。たとえば紫式部の「式部」は、父・藤原為時の官職「式部丞」に由来します(「紫」は源氏物語の登場人物・紫の上にちなむ後世の呼び名という説が有力です)。清少納言の「少納言」も、近親者の官職に由来すると考えられています。本名がほとんど伝わっていない、という点も入試で問われることがあります。

成人の儀式―裳着と元服

女子の成人を祝う儀式を裳着(もぎ)、男子の成人を祝う儀式を元服と呼びます。裳着では初めて裳(も)という装束を身に着け、これを境に結婚が可能な年齢と見なされました。元服では髪型や服装を大人のものに改め、成人としての名(諱)が与えられました。

陰陽道に基づく生活習俗

王朝貴族の生活は陰陽道の考え方に強く縛られていました。凶事が予想される日に外出や面会を控えることを物忌みと呼び、この間は自邸にこもって身を慎みます。また、目的地の方角がその日の運勢で凶とされる場合、いったん別の方角の家に一泊してから目的地に向かう方違え(かたたがえ)という習慣もありました。物語で人物が予定通りに動けない理由として、これらの習俗が背景に使われることがよくあります。

物の怪と出家

当時、原因不明の病気や心の乱れは、怨霊や生霊が取り憑いた物の怪(もののけ)の仕業と考えられ、僧侶による加持祈祷で祓おうとしました。源氏物語で六条御息所の生霊が葵の上に取り憑く場面は特に有名です。また、俗世を離れて仏門に入ることを出家と呼び、貴族女性が失恋や死別、無常を感じたことをきっかけに出家する場面は、王朝文学の定番の結末の一つです。

王朝の結婚・生活習俗 早見表
用語内容
通い婚(妻問婚)男性が女性の家に通う結婚形態。三日夜の餅で成立
後朝の文一夜を共にした翌朝に男性が送る和歌の手紙
垣間見物陰から女性を覗き見て恋に落ちる物語の定型
裳着女子の成人の儀式
元服男子の成人の儀式
物忌み凶事を避けて外出・面会を控えること
方違え方角の凶を避けて一旦別方向に泊まってから向かうこと
物の怪怨霊・生霊が取り憑くこと。加持祈祷で祓う
出家俗世を離れ仏門に入ること
◆ 差がつく識別ポイント

女房名の由来

女房名は本人の実名ではなく、近親の男性の官職にちなむ通称である、という原則を覚えておくと、本文中で「〜の君」「〜の乳母」のような呼び方が出てきたときに混乱しません。

物忌み と 方違え

物忌み凶を避けて家に「こもる」こと
方違え凶方位を避けて「別の場所を経由する」こと

復習問題 全9問

Q1平安貴族の一般的な結婚形態を何と呼ぶか。
A通い婚(妻問婚)。
Q2結婚が成立したとされる、三日目の夜に食べる餅を何というか。
A三日夜の餅。
Q3一夜を共にした翌朝に男性が送る和歌の手紙を何というか。
A後朝の文。
Q4物陰から女性を覗き見て恋に落ちる、物語の定型的な場面を何というか。
A垣間見。
Q5紫式部の「式部」という呼び名は、誰の何という官職に由来するか。
A父・藤原為時の官職「式部丞」に由来する。
Q6女子・男子それぞれの成人の儀式の名称を答えよ。
A女子は裳着、男子は元服。
Q7目的地の方角が凶とされるとき、一旦別方向に泊まってから向かう習慣を何というか。
A方違え。
Q8怨霊や生霊が取り憑くことを何と呼び、どうやって祓ったか。
A物の怪。僧侶による加持祈祷で祓った。
Q9源氏物語で葵の上に取り憑いた生霊は誰のものか。
A六条御息所。

累積復習 Day1〜5より5問

C1受領とはどのような立場の官職か。
A実際に現地に赴任し行政の実権を握る国司の筆頭者。
C2四月に行われる、王朝文学にしばしば登場する祭礼は何か。
A賀茂祭。
C3八代集の最初に成立したものは何か。
A古今和歌集。
C4枕草子を貫く美意識の言葉は何か。
Aをかし。
C5現存最古の物語は何か。
A竹取物語。
Day 7

総復習

全範囲を横断する実戦形式の問題で仕上げる

今日のゴール

  • 6日間の内容を範囲を問わず即答できる状態にする
  • 紛らわしいポイント(四鏡・三大随筆・摂政関白など)を確実に区別できる
  • 間違えた問題を特定し、該当するDayに戻って復習する

最終日の使い方

今日は新しい知識を追加するのではなく、これまでの6日間で学んだことを総ざらいする日です。以下の実戦問題を、本番と同じ感覚で解いてみてください。間違えた分野があれば、対応するDayのページに戻って講義パートを読み直すことをおすすめします。最後に「差がつく識別ポイント」の総まとめも載せています。

◆ 最終チェックリスト―紛らわしいポイント総まとめ
  • 作り物語 vs 歌物語:長編の虚構筋か、和歌中心の短編集合か
  • 四鏡の成立順 vs 時代順:成立は「大今水増」、時代順は水鏡が最古
  • 三大随筆:枕草子=をかし/方丈記=無常観+災厄/徒然草=無常観+処世訓
  • 八代集:最初は古今和歌集、最後は新古今和歌集
  • 摂政 vs 関白:代行するのが摂政、補佐するのが関白
  • 国司 vs 受領:総称が国司、現地に赴任する筆頭者が受領
  • 物忌み vs 方違え:家にこもるのが物忌み、経由地を挟むのが方違え

総合実戦問題 全15問

Q1次の作品を成立の古い順に並べよ。
①源氏物語 ②竹取物語 ③伊勢物語
A②→③→①。竹取物語(9世紀末〜10世紀初)→伊勢物語(10世紀前半)→源氏物語(11世紀初頭)。
Q2「男もすなる日記といふものを」の作者と、女性による最初の自照的日記文学の作者をそれぞれ答えよ。
A紀貫之(土佐日記)。藤原道綱母(蜻蛉日記)。
Q3三大随筆のうち、五つの災厄の記録から始まるものはどれか。
A方丈記。
Q4四鏡のうち、成立順では3番目だが、扱う時代は最も古いものはどれか。
A水鏡。
Q5今昔物語集の三部構成を答えよ。
A天竺(インド)・震旦(中国)・本朝(日本)。
Q6八代集を成立順にすべて答えよ。
A古今和歌集→後撰和歌集→拾遺和歌集→後拾遺和歌集→金葉和歌集→詞花和歌集→千載和歌集→新古今和歌集。
Q7天皇の政務を「代行」する役職と、成人天皇を「補佐」する役職をそれぞれ答えよ。
A摂政(代行)と関白(補佐)。
Q8次のうち令外官に該当するものをすべて選べ。
①太政大臣 ②蔵人頭 ③検非違使 ④大納言
A②と③。令外官は律令に規定のない後発の役職。
Q9四月に行われる賀茂神社の祭礼を何というか。またこの祭礼が舞台になる源氏物語の巻名を答えよ。
A賀茂祭。「葵」の巻(車争いの場面)。
Q10五節句を月日の早い順にすべて答えよ。
A人日(1/7)・上巳(3/3)・端午(5/5)・七夕(7/7)・重陽(9/9)。
Q11結婚成立の儀式として三日目の夜に食べるものは何か。
A三日夜の餅。
Q12清少納言・紫式部の呼び名は、それぞれ誰の官職に由来すると考えられているか。
A近親の男性(清少納言は近親者、紫式部は父・藤原為時)の官職名に由来する。
Q13凶事を避けて家にこもる習慣と、凶方位を避けて経由地を挟む習慣をそれぞれ答えよ。
A物忌みと方違え。
Q14次の記述のうち正しいものを一つ選べ。
①落窪物語は歌物語に分類される ②受領は現地に赴任しない国司を指す ③新古今和歌集は八代集の最後に成立した ④枕草子は無常観を基調とする
A③。①落窪物語は作り物語、②受領は現地に赴任する国司の筆頭者、④枕草子の基調は「をかし」。
Q15源氏物語で六条御息所の生霊が取り憑いた人物は誰か。またこうした現象を何と呼ぶか。
A葵の上。物の怪と呼ぶ。
◆ お疲れさまでした

これで7日間の古文常識講座は完了です。ここまでの内容が即答できれば、GMARCHレベルの古文常識問題には十分対応できる状態です。あとは過去問演習の中で、個別の作品の本文に触れながら知識を上書きしていってください。

Extra

順番暗記まとめ

「並べ替えなさい」に即答するための語呂・覚え方集

今日のゴール

  • 入試で頻出の「成立順に並べよ」問題に使う8系列をすべて即答できる
  • 成立順と、作中で扱う時代順がズレるパターン(四鏡)を区別できる
  • 語呂だけでなく、なぜその順になるか(時代背景)とセットで覚える

GMARCHレベルの古文常識では、単発の知識確認だけでなく「次の作品を成立順に並べよ」という並べ替え問題が非常によく出題されます。単語カード的に個々の作品を覚えるだけでは並べ替えに弱いため、ここでは各Dayで扱った作品群を系列=一本の順番として整理し直し、それぞれに語呂を付けました。表の下にある太字の項目が、間違えやすい「ズレ」のポイントです。

最頻出四鏡:成立順
大鏡 今鏡 水鏡 増鏡
語呂:「おおいまみずまし」=

Fort様が挙げた「大今水増」がこれです。成立順はこの4文字のリズムで覚えれば確実です。

ひっかけ注意四鏡:扱う時代の順
水鏡 大鏡 今鏡 増鏡
覚え方:成立順の「大今水増」から水鏡だけを先頭に引き抜くと時代順になる。水鏡(神武天皇〜仁明天皇)だけが桁違いに古い時代を扱うため。

「並べ替えよ」と言われたら、まず設問文が成立順を聞いているか作中の時代順を聞いているかを最初に確認してください。ここを読み違えると全滅します。

頻出八代集(勅撰和歌集)
古今 後撰 拾遺 後拾遺 金葉 詞花 千載 新古今
語呂:「こ・ご・しゅう・ごしゅう・きん・しか・せん・しん」と頭文字だけを一息のリズムで暗唱する。8音なので歩きながらでも唱えやすい。

最初(古今)と最後(新古今)だけは単独でも必ず即答できるようにしておくこと。設問の多くはこの二つの位置関係を狙ってきます。

三大随筆
枕草子 方丈記 徒然草
覚え方:作者の生きた時代でそのまま覚える。清少納言(平安中期)→鴨長明(鎌倉初期)→兼好法師(鎌倉末期〜南北朝)。
物語文学の成立順
竹取物語 伊勢物語 大和物語 宇津保物語 落窪物語 源氏物語
語呂:「竹取り、伊勢・大和で歌を詠み、宇津保・落窪を経て源氏に至る」という一文で流れごと覚える。作り物語(竹取→宇津保→落窪→源氏)と歌物語(伊勢→大和)が交互に並ぶ点も意識するとよい。

源氏物語がこの系列の最終到達点であることが、Day1で扱った「二つの流れの統合」という位置づけと対応しています。

日記文学の成立順
土佐日記 蜻蛉日記 和泉式部日記 紫式部日記 更級日記 十六夜日記
覚え方:作者名の並びで覚える。貫之→道綱母→和泉式部→紫式部→孝標女→阿仏尼。最初の貫之(男性・土佐日記)と最後の阿仏尼(鎌倉時代)だけ時代が離れている点が目印。
軍記物語の成立順
将門記 保元物語 平治物語 平家物語 太平記
覚え方:描かれた戦乱そのものの時代順と一致する。将門の乱→保元の乱→平治の乱→源平合戦→南北朝動乱、という日本史の出来事順とセットで覚えれば間違えない。
説話集の成立順
今昔物語集 宇治拾遺物語 発心集 十訓抄 古今著聞集
語呂:「今昔、宇治で発心し、十訓・古今著聞」と一文でつなげる。
歴史物語の成立順
栄花物語 大鏡 今鏡 水鏡 増鏡
覚え方:最初の歴史物語である栄花物語を四鏡の頭に付け足すだけ。「栄花+大今水増」。
◆ 順番以外にもある「思い込みトラップ」

四鏡ほど有名ではありませんが、同じ構造で受験生が引っかかりやすいポイントを集めました。「なんとなくセットで覚えているイメージ」と「実際の事実関係」がズレている箇所です。

清少納言 と 紫式部は「同時代のライバル」ではない

二人はよく同時代に張り合ったライバルのように紹介されますが、実際には宮仕えの時期がほぼ入れ違いです。清少納言が中宮定子に仕えたのは995年頃〜1000年(定子の死)まで。紫式部が中宮彰子に仕え始めたのは1005〜1006年頃で、清少納言が宮中を去ってから始まっています。つまり二人が同じ時期に宮中に同席していた期間はほとんどありません。紫式部日記にある清少納言への辛辣な批評は、又聞きの評判や作品(枕草子)を読んだ上での人物評だと考えられています。

「三代集」と「八代集」は別の括り

三代集古今和歌集・後撰和歌集・拾遺和歌集の最初の3つだけを指す括り
八代集古今〜新古今までの最初の8つを指す括り(三代集を含む)

「三代集」は「三大随筆」と字面・音が似ているため混同しやすい点にも注意してください。三代集は和歌集、三大随筆は随筆で、ジャンルがまったく別物です。

除目:春と秋、どちらが地方官か

春の除目(県召除目)地方官(国司など)を任命
秋の除目(司召除目)中央官を任命

「地方=都から遠い=後回し」という感覚的なイメージから、逆に秋が地方官だと覚え違えるケースが目立ちます。「県召=県(地方)を召す=春」とセットで覚えてください。

太政大臣は「一番偉い」が「常にいるとは限らない」

位階の序列だけを見ると太政大臣が最高位ですが、これは適任者がいなければ空席にしてよいとされる名誉職的な性格の官職(則闕の官〈そっけつのかん〉)です。実際に朝廷の政務を日常的に主導していたのは、常置の最高実務ポストである左大臣であることが多く、「位階の最高位=実権の中心」とは限らない点が古文本文の人物関係を読む上での落とし穴になります。

「今鏡」の「今」は現代という意味ではない

四鏡の中で最初に迷いやすいのが「今鏡」という書名です。この「今」は「現代の」という意味ではなく、「大鏡の後を継ぐ、続編としての鏡」という意味合いで付けられています。実際、今鏡は成立順で2番目(大鏡のすぐ後)ですが、扱う時代としても大鏡の直後(後一条天皇〜高倉天皇)を継いでおり、書名の由来が内容とも一致しています。

並べ替え実戦問題 全8問

Q1次を成立順に並べよ。①今鏡 ②増鏡 ③大鏡 ④水鏡
A③→①→④→②(大鏡→今鏡→水鏡→増鏡)
Q2次を、作中で扱っている時代の古い順に並べよ。①今鏡 ②増鏡 ③大鏡 ④水鏡
A④→③→①→②(水鏡→大鏡→今鏡→増鏡)
Q3次を成立順に並べよ。①千載和歌集 ②古今和歌集 ③新古今和歌集 ④後撰和歌集
A②→④→①→③(古今→後撰→…→千載→新古今)
Q4次を成立順に並べよ。①徒然草 ②枕草子 ③方丈記
A②→③→①(枕草子→方丈記→徒然草)
Q5次を成立順に並べよ。①源氏物語 ②宇津保物語 ③竹取物語 ④落窪物語
A③→②→④→①(竹取物語→宇津保物語→落窪物語→源氏物語)
Q6次を成立順に並べよ。①更級日記 ②土佐日記 ③紫式部日記 ④蜻蛉日記
A②→④→③→①(土佐日記→蜻蛉日記→紫式部日記→更級日記)
Q7次を成立順に並べよ。①平家物語 ②将門記 ③太平記 ④保元物語
A②→④→①→③(将門記→保元物語→平家物語→太平記)
Q8次を成立順に並べよ。①大鏡 ②栄花物語 ③増鏡
A②→①→③(栄花物語→大鏡→増鏡)。栄花物語が最初の歴史物語であることが根拠。

思い込みトラップ確認問題 全5問

T1清少納言と紫式部について正しい記述を選べ。①二人は同時期に宮中で顔を合わせていた ②二人の宮仕えの時期はほぼ入れ違いである
A②。清少納言の宮仕え終了後に紫式部の宮仕えが始まっている。
T2三代集に含まれる和歌集を3つ答えよ。
A古今和歌集・後撰和歌集・拾遺和歌集。
T3地方官を任命する除目は春・秋のどちらか。またその名称を答えよ。
A春。県召除目。
T4位階の序列で最高位に位置するが、常置ではない名誉職的な性格を持つ官職は何か。
A太政大臣(則闕の官)。
T5「今鏡」の書名の「今」はどのような意味合いか。
A「現代」という意味ではなく、「大鏡の後を継ぐ鏡」という意味合い。